目次 (参照される項目をクリックしてください)


  1.滋賀県におけるこれまでの認定企業・・(平成22年8月現在)  


  2.「一般事業主行動計画」策定企業事例集  
     事例1    菱琵テクノ梶@(合成樹脂製造業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・”ワーク・ライフ・バランスの浸透”  
     事例2    (有)ジーフォース (保険代理店)・・・・・・・・・・・・・・・・・・”ワーク・ライフ・バランスの浸透”  
     事例3    滋賀中央信用金庫 (協同組織金融機関)・・・・・・・・・・・・”社員の意欲や満足度の向上”  
     事例4    H  社 (建設業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”社員の意欲や満足度の向上”  
     事例5    NEC SCHOTT コンポーネンツ(株) (電子部品の開発・製造・販売)・・”社員の意欲や満足度の向上”  
     事例6    (株)菱  栄 (プラスチック加工)・・・・・・・・・・・・・・・・・・”生産性の向上”  
     事例7    S  社 (サービス業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”仕事の進め方、時間管理などに役立った”  
     事例8    (株)向茂組 (建設業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”仕事の進め方、時間管理などに役立った”  
     事例9    (株)橋本建設 (建設業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”仕事の進め方、時間管理などに役立った”  
     事例10   (社福)近江ふるさと会 (社会福祉事業)・・・・・・・・・・・・・”人材の定着”  
     事例11   原馬化成(株) (プラスチック成型・塗装・加工)・・・・・・・・”人材の定着”  
     事例12   高島鉱建(株) (建設業)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”社会貢献による企業イメージの向上”  





1.滋賀県におけるこれまでの認定企業・・・・・(平成22年8月現在)


         2007年認定企業  ・株式会社 平和堂
         2008年認定企業  ・株式会社 滋賀銀行、  ・日本電気硝子株式会社
         2009年認定企業  ・菱琵テクノ株式会社
         2010年認定企業  ・びわこテック株式会社                       (以上5社)



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  2.(「一般事業主行動計画」策定企業の事例集) 

事例1 ワーク・ライフ・バランスの浸透・・・・菱琵テクノ株式会社

  ”DDK活動の一環としてワーク・ライフ・バランスの推進に努め、「子育てサポート企業」として認定を受けた”
 

くるみん  所在地   長浜市(虎姫町)
 従業員数  163人 ( 男性 123人・女性 40人 )
 業 種   合成樹脂製造業

1.行動計画策定までの背景・きっかけ

当社の経営方針のキーワードは、@企業は人なりということと、A「ほんもの」のものづくりです。人を大切にし、その力を活かすという考え方はお互いに助け合う、知恵を絞って工夫する流れとなり、やがてこれが新事業や業務改善に繋がって企業利益の創出となり、企業はさらに成長し、社会に貢献するというサイクルになると考えている。 このような企業理念に基づき、平成12年に導入されたDDK活動は、「誰でもできる化」の頭文字から取った。誰でもできる生産性向上の為に、当社が開発した独自の手法である。 DDK活動は基本である4S(整理・整頓・清潔・清掃)から始まり、次のステップとして「仕事の分別と整理を行い、必要な作業・無駄な作業を分け、問題を整理して正しい仕事の流れをつくる。 道具類の位置決め、表示、作業手順・マニュアルの整備をし、誰でも見えるところに表示する。 このような生産性向上を目的に始まったDDK活動だが、その活動は現場だけでなく全社を挙げての活動であり、総務部門が取組んだテーマが、働き易い雇用環境の整備と、人材育成、人材活用を図るための社員制度の見直し、つまり「ワーク・ライフ・バランスの推進」である。活動の成果は、社員同士の助け合い・所定外労働時間の削減・休暇取得向上、あるいは高齢者の継続雇用などに繋がった。

2.行動計画策定の進め方

  総務部門としては、自社の現状の把握、他社の事例の収集、社外講習会や行政機関の取組み状況を参
考にする一方、平成19年からワーク・ライフ・バランス推進委員会を設けた。 組合幹部・会社幹部の他に、
女性社員の代表をメンバーとして加え、月1回定期的に開催している。 当面の協議課題は、@男性の育児参
加促進事業の推進、A時間外労働・休日出勤の縮減、Bこども手当の創設などで、委員会でワーク・ライフ・
バランスに関するアンケート調査をしたり、研修の日程・講師・内容、ノー残業デーの設定なども検討し、協
議結果は管理職会議での決定を経て実行に移される。
 この女性社員の代表は、将来的にもワーク・ライフ・バランスの核となって欲しいと考えており、現在は会
社の広報を担当しているほか、ワーク・ライフ・バランスに関する活動のPRや、社員からの情報収集の窓口
として活躍してもらっている。

3.取組み内容・特に力を入れたり、工夫した点


(1) 改善活動は、まず企業としてどういう理念で何に取組むか方針を決め、社員に分かり易く伝達しなければならない。 DDK活動によって、仕事・人・設備のすべてを見直し、変えていくわけだが、例えば、「DDK活動をすることによって生産性が良くなっても、社員の労働条件が悪くなることは有りません」ということをハッキリ伝えないと、改善活動に積極的に参加してもらいにくい。
(2) DDK活動は社員の多機能化ではない。 全体で応援するため、工程の難易度を分類し、誰でも出来る工程は、ワンポイントレッスンで教える・・という進め方をする。
(3) 男性の育児参加を推進するために、時間外勤務時間のハードルを変えた。従来は平均30時間程度の残業が有ったが、目標を10時間に設定し、「時間外勤務をすることは悪ですよ、10時間以上の残業は異常ですよ・・」と社員に呼びかけ、それでもオーバーする社員は個別面談をしたり、管理職会議で取上げて効率的な、付加価値の高い仕事をしてもらうよう指導した。
(4) DDK活動の推進が社員や他部署からいつでも見えるように、TPMニュースと、ホームページを活
  用している。
(5) 両立支援制度を利用しやすいように、特に育児・介護休業を取得しても不利になることがないような、賃金・評価制度を採用している。
(6) 育児・介護休業者の代替要員には、原則として派遣社員やパートターマーを充てている。これもDDK活動により作業そのものが「誰にでもできる」ように、単純化・明確化され、常に情報が社員間で共有化されているため、代替によってカバーされやすくなっているためでもある。

4.労働時間・休暇・両立支援に関するこれまでの取組み内容

  育児・介護の両立支援に関して現在、同社が重点の1つと考えているのは、「男性の育児参加支援」で
ある。 男性がより育児休業を取得しやすくするため、従来は介護や私傷病に限定されていた「喪失年次有給
休暇復活制度(積立年休)」 の利用目的に育児を加え、1週間まで取得できるようにした。
 この結果、男性の育児休業取得者が実現した。

( ◎ 主な労働時間・休暇・両立支援制度 )

 労働時間・休暇   1.フレックスタイム制(H17〜)
 2.計画年休(年間計5日)
 3.リフレッシュ休暇(H16〜)
 4.半日年次有給休暇

 1−@ 原則定時勤務の職場に適用
 1−A 10時〜15時迄をコアタイムに設定
 2ー@ 1日は年末に全社で一斉休暇
 2ーA 年初に休暇計画に組み込む
 2ーB 4日は個別に設定(H16〜)
 3ー@ 勤続10年で3日、20年で4日、30年で5日を付与
 4ー@ 回数制限なし
 4ーA 正社員以外に、準社員・パートタイマーにも適用

 両立支援  (特別休暇)
 1.勤務時間内通院(有給)
 2.配偶者出産休暇(有給)
 3.子の看護休暇(有給)
 (特別休暇外)
 4.育児休業(無給)
 5.介護休業(無給)
 6.喪失年次有給休暇復活制度
  (時効で消滅した年次有給休
   暇を復活)
 7.その他、短時間勤務制度、
   時差出勤など

 1−@ 妊娠中・出産後の女性が健康診査・保育指導を受けるた
      め通院する時間を付与
 2−@ 配偶者(妻)の出産の付添い等のための休暇として2日
      (取得は1日単位)を付与
 3−@ 小学校就学前の子の負傷、疾病で看護するための休暇
      として年間5日を付与
 4−@ 期間等は法定通り
 5−@ 期間等は法定通り
 6−@(介護・私傷病)7日以上欠勤する場合に取得できる
     取得順位:前年度繰越し分⇒前々年度以前の失効分
     ⇒当年度分
 6−A(育児)・1週間までの短期育児休業として利用可
          ・前々年度以前の失効分から取得




5.これから行動計画を策定される企業へ

(1)行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット
 ・メリット ⇒ @ワーク・ライフ・バランス推進のための、管理職の理解が深まったため、男性育児休業取得
           が可能になった。
          A両立支援のための、社内規定類の理解が深まったため、子の看護休暇取得者が増えた。
          B所定外労働時間の縮減により長時間勤務も無くなり、ワーク・ライフ・バランスの推進に
           繋がった。

(2)これから行動計画を策定される企業へのアドバイス
          @改善活動はコスト負担とならないよう効率的に進め、”両立支援有りき”の考え方で推進す
           ることが大事。
          A取組みのきっかけは改善活動から取組んでいき、仕事のやり方を変えることを模索するやり
           方がよい。
          B何をやるか決定すれば、トップダウンで実行する。
          C労務担当者の工数が増えても、このような仕事の達成こそ本来の労務の仕事(社員のやり
           がい、働きがい=雇用環境の整備)だと考えることが大事で、ルーチングワークだけを
           こなしていても、社員や会社の満足度は向上しない。
(3)社員の声 (虎姫製作所 Aさん)
           長男が生まれるにあたり、「喪失年次有給休暇復活制度」が育児休業に利用できるように
          なったと、総務部から説明を聞き、2回に分けて取得した。 妻は以前から入退院を繰り返
          しており、家事は自分が担当していたので、仕事との両立がいかに大変かは実感していたが、
          会社の仲間の理解もあり、簡単な引継ぎだけで休みを取ることが出来た。 さらに産後の大
          変な時期に育児を妻に任せっきりにせず、協力したおかげで、子どもの成長をともに喜べる
          時間が持てたことを本当にうれしく思っている。

〜 ◎ 活動の成果 〜

* 同社は平成20年3月には、滋賀県のワーク・ライフ・バランス推進企業として、また平成21年7月には、
「一般事業主行動計画」を達成して、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣(滋賀労働局長に委任)の認定
を受けられました。


菱琵テクノ梶@「一般事業主行動計画」(第2回) (2009.4.15)
 「活気・元気ある職場で、笑顔でお客様をむかえる、さわやか職場づくり」さらに、「誉められる会社になる」と
いうあるべき姿の実現に向け、ワーク・ライフ・バランス推進企業として、全ての社員が仕事と子育てを両立し、
生き生きと働きがいをもって継続勤務できるように雇用環境を整備する。


 1.計画期間  平成21年4月1日から平成24年3月31日

 2.内  容

   
目  標 1
 ★ワーク・ライフ・バランス委員会を毎月開催し、課題を見える化して改善を実施する。

対    策
 ・平成21年4月〜  男性の育児参加促進事業で取組んだ課題
 ・平成21年5月〜  改善策の検討
               部長会、管理職会議等への説明
               改善策実施、検証

目  標 2
 ★ノー残業デーの日数を増やして継続、実施する。

対  策
 ・平成21年4月〜  毎週水曜日の実施
               パトロール隊による周知・啓蒙

目  標 3
 ★地域活動に参加するためのボランティア休暇を導入する。

対  策
 ・平成21年10月   制度内容の検討
 ・平成22年3月    就業規則の改正、届出および周知

目  標 4
 ★育児休業の取得状況を次の水準以上にする。
  男性   計画期間内、新たに1人以上取得すること
  女性   取得率100%以上を維持すること

対  策
 ・平成21年10月〜  両立支援制度の周知、研修の実施
                育児参加計画書の作成、奨励



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事例2 ワーク・ライフ・バランスの浸透・・・・有限会社 ジーフォース

”全員ミーティングにより、仕事と家庭の両立ができるという意識が社内で高まった”


    所在地   栗東市
    従業員数  6人 ( 男性 2人・女性 4人 )
    業 種    保険代理店


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

  平成21年1月頃、出産・育児を控えた女性社員の代替要員を確保したいと思い、両立支援レベル
アップ助成金(代替要員確保コース)について滋賀労働局に電話で問い合わせた。その際に育児・介護
雇用安定等助成金(中小企業子育て支援助成金)等についても説明を受け、資料等も送られてきたので、
これを機会にワーク・ライフ・バランスについて取組むことにした。
  当社は従来から女性従業員が多いことも有るせいか、出産・育児をはじめ仕事と家庭の両立について
トップにもよく配慮してもらっていて、自分の仕事の段取りさえつけば有給休暇も取り易く、産休前でも
通院のため早帰りさせてもらうことも出来るような社風ではある。 ”人は財産である”というのが常々
トップを初め、社内のモットーとなっている。
  そんなことも有って、行動計画の目標は、「いかにして働き易く、仕事を長く続けられる職場にする
か・・」を念頭に置いて別紙の通り決定した。推進担当は女性社員が担当することとし、平成21年2月
から2年間の行動計画でスタートしたが、現段階はワーク・ライフ・バランスについて、具体策の検討と、
トップを初め全員の意識高揚を図っている段階であるが比較的順調に進んでいると思う。


2.ワーク・ライフ・バランスの進め方

  推進担当者を中心に全員が集まってミーティングを開き、出産・育児休業が終了しても仕事と家庭
を両立するにはどういう事をするのが良いか話し合った。 出産・育児を身近に控えた女性社員を中心
にして話し合った結果、”こうすれば仕事と家庭を両立できる”という共通認識と自信のようなものが
湧いてきた。

3.ワーク・ライフ・バランスを進める過程で苦労した点、今後努力したい点

  女性社員が育児休業を取って職場復帰しようとする際、育児休業中に保険商品の中身が変わって
しまうことが有るので、本人の都合良い時間に出社してもらって、いろんな情報を伝えている。
  まだ計画中ではあるが、育児中の女性社員のことを考慮して、例えば事務所のスペースに子ども
用のベッドを置いて、子どもの着替えや、親がどうしても手が離せない場合は社員の誰かが面倒
を見たり、保育のために誰かを雇ったりして、アットホームな職場環境にしたいと考えている。
特に子育て支援に関して、保育者又はNPO法人などから「こういう計画で、こういう活動をするので
協力して欲しい」という具体的な要請が有れば、会社としても個人としても積極的に参加しようと考え
ている。

4.ワーク・ライフ・バランスを推進するに当たっての現実の問題

  育児休業を取得中の女性社員が少しでも早く職場復帰できる為に、会社側の努力はもちろん必要
であるが、”保育所が整っていない”などの問題の解決に、行政側も努力を加速して欲しい。
育児・介護が必要な者に対して、国や県などでも両立支援のバックアップをしようと考えてくれてい
ると思うが、相談窓口がたくさん有ったり、手続きも面倒で分かり難い。

  

5.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

* メリット → 出産後も仕事と家庭の両立ができるという意識が高まった。

6.今後、行動計画を策定される企業へのアドバイス

  @社員が本当に何を望んでいるのかを、トップと社員がよく話し合って確認することが必要。
  Aどうすることが、雇用安定に繋がり、働き易い環境になるのか十分検討する必要がある。
  B行動計画を進め方は、推進担当者が中心になり、社員全員の気持ちを吸収してトップに伝える
   やり方が効果的だと思う。


(有)ジーフォース 「一般事業主行動計画」(第1回) (2009.2.1)
 社員が安心して子を生み育てられる職場環境を目指し、妊娠・出産・復職における支援のあり方を検討する。


 1.計画期間  2009年2月1日から2011年1月31日

 2.内  容  

   
目 標 1
  (A−1)

 A.子育てを行なう労働者等の職業生活と家庭生活との両立を支援するための雇用環境の整備

  ☆育児休業中の従業員の職業能力の開発、向上等、職場復帰しやすい環境の整備をする。

対  策
 ・2009年2月〜  育児休業中の従業員の職業能力の開発、向上のために必要な情報の
              検討と、情報提供の方法の検討
 ・2009年3月〜  従業員への制度の周知、実施

目 標 2
  (A−2)

  ☆始業、終業時間の繰上げ、繰下げ、短時間勤務制度の実施など、従業員が育児時間を確保
    できるようにするための措置を実施する。

対  策
 ・2009年2月〜  実施内容の検討
 ・2009年3月〜  従業員への制度の周知

目  標 3
  ( B )

 B.働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備

   ☆所定労働時間の削減に取組む

対  策
 ・2009年2月〜  所定外労働の原因の分析を行う
 ・2009年3月〜  従業員への啓発を行う

目 標 4
  ( C )

 C.その他次世代育成支援対策に関する事項

  ☆地域において子供の健全育成のための活動を行なうNPO等への従業員の参加を支援す
    するなど、子供、子育てに関する地域貢献活動の実施

対  策
 ・2009年4月〜  子供の健全育成のための活動を行なうNPO等の把握と活動内容の調査
              支援内容の検討
 ・2009年10月〜 活動の実施
           


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事例3 社員の意欲や満足度の向上・・・・滋賀中央信用金庫

”短時間勤務制度対象者の限度引上げ、育児・看護のための特別休暇増加による職員の満足度向上”


    所在地   彦根市
    従業員数  403人 ( 男性 256人・女性 147人 )
    業 種   協同組織金融機関


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

  H17年7月、21世紀職業財団主催の「男性育児参加事業」に参加の呼びかけがあった。 男性の
育児参加にはまず職場環境を整備することが必要と考え、1年目は体制づくり、2年目に結果に繋げるとい
う目標で2年計画でワーク・ライフ・バランスを推進することとした。 当初は人事部を中心に委員会を立
ち上げたが、推進力を付けるためにはトップダウン方式が効果的であり、この方式を取った。
  まず取組んだのが、@ノー残業デーの設定 (月2回)、A育児休業規程のみなおし、B有給休暇の年間
取得率を上げる、C男性の育児休暇取得者が期間内に出るようにするの4点である。


2.行動計画策定の進め方

  庫内担当者を決めたり、労働環境や実績について自庫の現状を把握する一方、職員のニーズを把握す
ることとした。 もともと庫内には”風通しの良い職場”を作るためホットラインが有るほか、年1回、職員と人事
部長とがヒアリングをする機会があるのでこの機会を利用し、職員のニーズや生活環境にも配慮した計画
策定をするよう心掛けた。
  この結果、策定した今回の行動計画は末尾掲載の通りで、平成20年度4月をスタートとした。

3.取組みの内容・特に力を入れたり、工夫した点

@ 残業の縮減
    残業については、業務の関係でどうしても発生するが、これまでは同僚を気遣って一緒に残業するとい
   う状況もあったが、職員の健康面、メリハリをつけた仕事の仕方で気分のリフレッシュがあれば新たな
   意欲が湧くという考え方から「つきあい残業はやめなさい・早く帰って家族一緒に過ごしなさい・・・」と
   いうトップダウンの方針を打ち出し、その結果残業は従来より減少した。


A 「男性の育児参加計画書」の作成
    男性の育児への参加を図るために、「男性の育児参加計画書」の様式を作成し、出産の予定が有る職
   員や、出産から6歳の小学校入学までの子どもを持つ職員に記入してもらい、人事部とヒアリングを行っ
   て”どういう休みが欲しいか”を具体的に話し合うので、育児のための特別休暇が取り易くなる一方、企
   業側としても人員体制のローテーションが取り易くなった。


B 従業員向けマニュアル「育児・介護両立支援の概要」の作成
    就業規則・規程から抜粋した「育児・介護両立支援の概要」というマニュアルを作成し、職員が育児・
   介護に直面した場合、すぐ活用できるよう工夫した。


C 女性職員のキャリアアップ
    女性職員のキャリアアップを図るため、従来から制度として有った一般職・総合職への選択を一定の審査
   を経れば職員が選択できることとした。 一般職は基本的には残業もないがキャリアにも限度があるに比
   べ、総合職になるとキャリア UPの機会や待遇面でも上がるというメリットが有るので、育児から手が離れた
   職員が総合職になれる資格を持てるようにした。 現在、女性職員の管理職は約10%であるが、これを将
   来は20%に増やしたいと考えている。


D 「滋賀県家庭教育協力企業」として登録
     これは、経営者・従業員を含めた企業と、滋賀県教育委員会が協力して家庭教育の向上を推進す制度
    で、当庫では、参観日や保護者会など学校行事に参加し易い職場づくりに向けた取り組みとして「育児・
    看護のための休暇制度」を平成19年4月に創設した。 庫内で家庭教育学習に関する講習会を開催した
    り、啓発ポスターの啓示を行い、この結果、平成20年度は、男性29人を含む57人の職員がこの制度
    を利用し、入学式・卒業式への出席も増えた。


E 彦根市の「男女共同参画推進事業者表彰」の受賞
     彦根市から男女共同参画推進事業に参加して欲しいとの要請があり、自由闊達で活力のある職場つくり、
    職員の資質の向上と、より良い人材の育成に努めた結果として、彦根市より「男女共同参画推進事業者表
    彰」を受賞した。

4.行動計画の達成状況

  比較的順調に進んでいる。 中でも短時間勤務制度を満3歳から4歳に引き上げ、また小学校6年生までの
子を持つ親は年間10日間の育児・看護のための特別休暇(有給)の制度を設け、多くの職員が活用している。
  また、女性の育児休業取得率はほぼ100%、短時間勤務制度の利用者も80%を超えている。

  

5.難しかった点や苦労した点、またうまくいかなかった点

  いかに休み易い環境にするか腐心した。 ”出産・育児”対象外年齢層の職員から苦情がでないよう、一方
で「ノー残業デー」の推進や「年次有給休暇」の取得促進に力を入れた。
  育児のための短時間勤務制度利用者や育児休業を取得する職員が休み易い環境にするための人員配置 に
苦労した。
  特別休暇が増加して通常の有給休暇が減少することを懸念したが逆に上昇し良かったと評価している。
男性の育児休業取得者がまだ出てこない。 これはやはり休業中は収入減が有ることと、「休むと皆に悪い・・」
という昔ながらの固定観念があると思われ、これからの課題である。

6.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

  *メリット   →  短時間勤務制度対象者の限度引上げ、育児・看護のための特別休暇増加により利用者が
              増え、ワーク・ライフ・バランスと職員の満足度向上に繋がった。
  *デメリット  →  時短制度利用者増加による人事担当者の負担増(人事異動等)

7.これから行動計画を策定される企業へのアドバイス

  やはり、トップダウンのやり方が推進力が有り、効果があがると思う。


8.職員の声

  「子の育児・看護のための休暇制度」制度を利用した男性職員は、「双子で核家族のため、子どもの健診など
 に妻ひとりで連れて行くのは大変です。付き添うことができるので、制度を活用しています」と話して下さいまし
 た。

 

滋賀中央信用金庫 行動計画
  職員が仕事と子育てを両立させることができ、職員全員が働きやすい環境をつくることによって、全ての職員
がその能力を十分に発揮できるようにするため、次のように行動計画を策定する。


 1.計画期間  平成20年4月1日から平成22年3月31日までの2年間
 2.内  容

     
目 標 1
  短時間勤務制度を満4歳から小学校就学まで引き上げる

対  策
 ・平成20年4月〜  引上げ内容を検討
 ・平成21年4月    小学校就学までに引上げる

目  標 2
  パート職員の正社員への登用制度を導入する
 
対  策
 ・平成20年4月〜  正社員登用制度の実施及び周知
 ・平成21年4月    正社員登用の実績

目  標 3
  女性職員のキャリアアップを図る

対  策
 ・平成20年4月〜  一般職から総合職への転換制度の周知
 ・平成22年3月    女性管理職(主任以上)を2割以上とする

目  標 4
  ノー残業デーの回数を増加させる

対  策
 ・平成20年4月〜  実施日の調査、開始時期の検討
 ・平成21年4月    ノー残業デーの増加実施
 
 


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事例4 社員の意欲や満足度の向上・・・・H 社

”「妊娠中及び出産後の社員の健康管理や相談窓口の設置」などきめ細かい配慮による両立支援”


  所在地   長浜市
  従業員数  15人 ( 男性 11人・女性 4人 )
  業 種    建設業


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

         H20年7月頃、滋賀労働局主催でワーク・ライフ・バランスに関する説明会が有り、その中で滋賀
       県ワーク・ライフ・バランス推進企業登録についても理解を深めた。
         当社は2003年、ISO9001を取得している。 当社の経営方針は、基本的な姿勢として、会社を
       取り巻く諸情勢をよく分析・把握し、足元を固めながら着実に事業を展開する、決して無理をしない
       という考え方である。
         しかし、公的資格保持者を維持しないと事業が継続して行けない現状がある。 資格取得に関す
       る費用は本人からの申し出により、会社側が全額負担とし、現在では女性社員を含め全員が、
       建設業関連の資格を取得しており、さらなる取得を目指して現在も努力している。



2.行動計画策定のために、事前に準備した事項

         企業の意思決定機関といえる、営業・工務・総務のヘッドに社長・専務を加えた5人で構成される
       トップ会議をそのまま「検討委員会」とし、総務の女性社員をワーク・ライフ・バランスの推進担当者
       に置いた。社員の人数からいっても、推進担当者が一人で行動計画の立案・現状把握・準備・実行・
       実績把握を行うこととなり、産休中の社員の仕事をカバーしながら、順調とは言えないが、無理をせ
       ず、着実に一歩ずつ推進させるようにしている。


3.ワーク・ライフ・バランスに関して、推進担当者が工夫した点

       @ 行動計画の目標を設定するために、まず就業規則類を社員全員で確認した。これは社員が現時点
         の規則を再認識するとともに、社員から希望を出してもらうために必要であった。
       A ワーク・ライフ・バランス推進に関するニュースや伝達事項は、朝のミーティング時に推進担当者
         が周知したり、文章類はコピーを休憩場所に置くようにした。
       B 意思決定が必要な場合は、いつでもトップ会議(=検討委員会)に申し出て協力してもらうよう、
         お願いした。
       C 「妊娠中及び出産後の社員の健康管理や相談窓口」を総務に設置した。推進担当者が女性なので
         相談が気軽にできている。
       D 産休で休んでいる女性社員とは定期的に連絡を取り、会社の情報を知らせることによって職場復
         帰しやすい状況を作っている。
       E 会社側からは、創業時より独身者は誕生日に、既婚者は結婚記念日に記念品が渡される他、年数
         回実施されている。


          このような活動の結果、別紙のような行動計画を策定した。 目標は5項目になっているが目標
        ごとに、実施日・実施内容・結果をパソコンに入力していき、進捗状況を推進担当者として絶えず
        把握しているので、ワーク・ライフ・バランスの状況が一目瞭然であるとともに、今後の推進計画
        が立案しやすい。
          例えば、H21年3月10日には、滋賀県が推奨している「淡海子育て応援カード」の情報を該当
        年齢の子どもを持つ社員に提供し、申込みの有った5人にカードを配布した。 このカードは子育
        てをしている家庭が、あらかじめ県に登録したお店を利用した場合、サービスがもらえるという制
        度である。
          目標3に「小学校就学未満の子を持つ社員が希望する場合に可能な労働体制の見直しを行う」を
        掲げた。 この結果、例えば介護が必要な社員が、その諸事情を会社に申請すれば、作業内容を
        調整し、社員同士がカバーし合うようになった。当社の規模の会社では、小回りが利くのがメリッ
        トといえる。
          また、フレックスタイムの導入も検討している。 工務部門は基本的には残業はあまり生じないが、
        現場の書類作成等で残業が生じる場合は、子育て支援の為、一旦、夕食時間帯の帰宅を認めること
        も就業規則に明記した。
          残業については、毎週土曜日をノー残業デーとした。
          ノー残業については、工事の納期完成時など無理な時もあるが、早く家に帰ろうという意識が高ま
        ったのは確実である。

  

4.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット   → 「妊娠中及び出産後の社員の健康管理や相談窓口の設置」により、いろんな助成金
                 を知ることができ、対象となるか等を調べながら、社員の質問等に対処する事で、社
                 員同士のコミュニケーションも増加し、職場環境作りに貢献できている。
        デメリット → ワーク・ライフ・バランスの周知の為、回覧など、ちょっとした仕事は増えているが、
                 情報収集の漏れの無いよう努めている。

5.これから行動計画を策定される企業へのアドバイス

        当社と同規模の企業であれば、 大きな目標を掲げず、身近なテーマから取り上げ、現状を少しず
       つ改善していくやり方が良い。
       個人の都合や家庭事情が有っても、遠慮して言えない社員もいる。相談窓口を作って社員の要望
       を聞き、ワンクッションを置いて会社に伝えることもひとつの方法だ。
       社員同士の交流の機会を作ること。 例えば当社は家族を交えたバーベキュー大会を企画し、そ
       の機会に家族に職場を見てもらおうと計画している。

H 社 の 行動計画

          少子化・核家族化が進む中、仕事と子育てを両立しながら社員が十分能力を発揮できる職場づくりをめざ
          し、次の行動計画を策定する。


 1.計画期間  平成20年9月5日から平成22年9月4日までの2年間
 2.内  容    
目  標 1
  妊娠中及び出産後の社員の健康管理や相談窓口の設置
  産前・産後の見直しをする

  実施時期と方策
 ・平成20年9月〜  該当者へ(要望・不安事項)アンケートの実施
              不安要素への情報収集・改善点検等検討開始
 ・平成20年11月   対応策等、社員への周知

目  標 2
  子どもの出生時における父親の休暇取得の促進
 
  実施時期と方策  
 ・平成20年9月〜  該当者の把握・希望の確認
 ・平成21年4月    就業規則の周知及び改定事項等の再確認
              ・月例会議にて全社員に周知

目  標 3
   小学校就学未満の子を持つ社員が希望する場合に可能な労働体制の見直しを行なう
   (就業規則第23条の1参照)

  実施時期と方策  
 ・平成20年9月〜  制度内容の検討開始・対象者の把握
 ・平成21年2月    試作検討
 ・平成21年4月    就業規則の内容を月例会議にて全社員へ周知
 ・平成21年○月    今後の課題等の検討

目  標 4
  平成21年4月までに所定外労働時間削減の為のノー残業デーを設定、実施する

  実施時期と方策  
 ・平成20年9月〜  検討開始
 ・平成21年4月    制度の周知及び実施
 ・平成22年○月    改善等の検討・問題点はないかの確認

目  標 5
  子ども参観日の実施
  子どもが保護者である社員の動く姿を実際に見ることができる「子ども参観日」
  を平成21年8月末日までに実施する。

  実施時期と方策  
 ・平成20年10月〜 ニーズ調査・検討開始
 ・平成21年8月    実施日・内容の検討
 ・平成21年8月    参観日の実施に向けての検討



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事例5 社員の意欲や満足度の向上・・・・NEC SCHOTT コンポーネンツ 株式会社

”年休の半日行使日数の上限引上げにより、学校行事への参加が容易になった”


  所在地   甲賀市
  従業員数  207人 ( 男性 147人・女性 60人 )
  業 種   電子部品の開発・製造・販売


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

          平成17年頃、(財)21世紀職業財団のセミナーに参加するうちにワーク・ライフ・バランス推進に
        ついて人事担当者の意識が高まる一方、親会社からも法令改正や、「女性社員の活用についてこん
        な動きが有る・・」などの情報が寄せられていた。 当社は従来から「目立たないけれど中身は世界一
        になる」いう社員同士の合言葉が有り、「良いと思うことはトップに具申して直ちに実行する」という
        社風であったので、全社的にワーク・ライフ・バランスを推進する環境は出来上がっていたと思う。
         このような経過を経て、第1次行動計画を平成17年4月から2年間の計画期間で策定し、さら
        に第2次行動計画を平成19年4月から5年間の計画期間でスタートさせた。


2.ワーク・ライフ・バランスの進め方

        @総務セクションの人事担当は男性1名、女性2名、計3名の社員であるが、職場環境等に関する改
          定は労働組合の合意が必要となる。 逆に言えば社員の声は、常に労働組合に集約していると
          言えるので、普段から労働組合と接触している男性社員が中心となって、社員の声を吸収するよう
          に努めた。
        A働き易い職場つくりを目指して、これまで就業規則に規定されている内容でもそれを知らない社員
          のために、”知らせてあげる”という活動を始める予定にしている。 例えば、部下の女性が育児や
          看護で休みたいと思っても上司が理解してくれないと休みも取れないということも有ったので、
          マネージャーへの昇進研修時において、子を持つ女性への配慮を促している。
        B社員を対象としてアンケート調査やヒアリングを実施して、ワーク・ライフ・バランスに関する意識の
          高揚を図った。

3.ワーク・ライフ・バランスの目標と特徴

         行動計画の目標には、@出産・育児に関する社内制度の見直し、A法を上回る制度の導入を掲げ
        た他に、特徴的なものとしてB不妊治療に対する補助制度の導入を掲げた。 これは保険が利かな
        い、あるいは、国の補助が使い難いという病気に対する金銭的な補助を会社がしようというもので、
        この不妊治療も子どもが欲しいが治療のための金銭的な余裕が無い、あるいは所得制限で補助が
        受けられない、また申請期限の制限などで困っていたり、諦めている人に対して、国が出来ない部
        分を会社が手助けをし、結果として少子化対策に繋がればと考えて取組んでいるものである。
         普段の職場環境に関する社員の声は、制度としての相談窓口は無いが、女性の人事担当者が、社
        員同志の立ち話の中から拾い集めた情報を出来る限り反映するよう努力している。

  

4.行動計画の推進にあたって苦労した点

        @行動計画の目標に掲げた中で、苦労をしたものは「女性懇談会の開催」である。 会社としては、
          定期的に会社が指名した女性に集まってもらって懇談会を開催し、ワーク・ライフ・バランスの周知
         や、育児・看護あるいは有給休暇に関する会社制度の周知、あるいは働く女性の声を反映させて働
         き易い職場環境を作る制度に改善する手段にしたいと考えていたが、通常の仕事が忙しいという時
         間的な制約から、思うように懇談会に出席してもらえない状況である。
        Aはっきり言って、事業環境が安定していない状況では両立支援は進まない。 特に仕事が無い状況
         の部署が有ったり、特定の部署だけが忙しい状況では、不公平感が出てきたりするので、職場の上
         司や仲間の理解がなければ短時間勤務制度や、育児休業制度は活用しにくいことが分かった。

5.行動計画の推進にあたって、力を入れたり、工夫した点

         うまくいった事例としては、年休の半日行使日数を従来の制度では6日(半日計算で12回)であっ
        たが、上限を12日(半日計算で24回)に上げた。 これにより、授業参観やPTA役員活動など、
        学校行事への参加が容易になったと喜ばれている。

6.行動計画を策定してのメリットあるいはデメリット

        メリット →年休の半日行使日数を12日まで上限を上げた(旧制度では6日)ことにより、学校行事
               への参加が容易になった。

7.これから行動計画を策定される企業へのアドバイス

        @行動計画の策定は、本当に働き易い職場環境を作り上げることが主旨であって、計画を作るこ
          とが目的になってはならない。
        A目標は、社員からの意見・要望の積み上げと、世間一般の流れを考慮して決められるべきで、「声
          を聞くのは下から、実行するのは上からの強い意思で・・」ということが言える。
        Bワーク・ライフ・バランスは、トップダウン方式により行うべきで、トップの力強い理解が無いと
          進まない。
        C両立支援に関しては、企業ももちろん努力するが、企業の力にも限界があり、例えば保育施設の
          充実など、行政の力がないと進まないものもある。 企業の努力と個人もワーク・ライフ・バラ
          ンスを工夫しながら働く、これに行政が力強くバックアップして、三位一体となることが必要だ
          と思う。

NEC SCHOTT コンポーネンツ株式会社 行動計画



 1.計画期間  平成19年4月1日から平成24年3月31日
 2.内  容  

       
目  標 1
   (A−1)

 A.子育てを行なう労働者等の職業生活と家庭生活との両立を支援するための雇用
    環境の整備

   育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境の整備

目  標 2
   (A−2)

   その他
   ・職場管理者向け教育の実施
   ・不妊治療に対する補助制度等導入の検討
   ・女性懇談会の開催
   ・育児休職、育児短時間勤務の利便性向上の為の検討

目  標 3
  (  B  )

 B.働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備

   年次有給休暇の取得促進のための措置の実施
   ・年休の半日行使日数の上限拡大



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事例6 生産性の向上・・・・株式会社 菱 栄 

”残業減・休暇取得促進による働く意欲向上に伴い、業務効率が上がった”


  所在地   米原市
  従業員数  27人 ( 男性 24人・女性 3人 )
  業 種    プラスチック加工


1.行動計画策定までの背景・現状・きっかけ

       ワーク・ライフ・バランスについては、県からの案内も有り、直接のきっかけは親会社が既に両立支
      援の取組みを進めていたことと、従業員の働く環境を少しでも良好なものにするため自主的に取組ん
      だ。
       当社の事業は、親会社の製造工程で発生した廃プラスチックを引取って再生加工等の処理をし、
      親会社に運搬、また売却・再利用するという工程を担当している。 事業内容が、廃棄品を扱うことか
      ら悪いイメージを持たれがちなので、これを払拭するために従業員が働き易い環境を作ることと、「給
      料手当ては低くても、福利厚生は配慮している・・」という会社にすること、あるいは「リサイクルと
      いう事業は、地球環境の維持改善に正面から取り組んでいる事業であり、社会にとっても、親会社にと
      っても、大切なんだ・・」という事を従業員に理解してもらうための方針を掲げ、日々努力している。


2.行動計画策定の目標・進め方・あるいは工夫した点

       上記のような基本的な方針のもと、目標としては@残業の縮減や有給休暇の取得促進、A働き方
      の見直し、子どもや若年者に対する職場見学等の受入れや地元や会社行事を通じての従業員家族や地
      域社会との交流などを掲げた。
       残業に関しては、従来から1ヶ月当り、一人平均20時間以内でそれほど多くはなかったが、さらに
      縮減に取組んだ。
       また、賃金体系を見直し、例えば家族手当の引上げや慶弔手当の充実を図った。
       有給休暇の取得増加のために、計画的に年休を取得することを勧奨し、例えば子供の学校休みに従
      業員の有給休暇を取得するなど、従業員が休みたい時に休むよう勧めている。
       また有給休暇は、部門ごとに計画的に一斉に取得してもよいことにした。ただし、部門一斉の場合
      は親会社や社外にもこれを連絡してから実施している。
       この部門一斉休は社員会でいつにするか決めて、会社がこれを承認する仕組みにしている。
       従業員が休みたい日に有給休暇をとる前提として、各人は自分の仕事を調整した上で、早くは1ヶ
      月前に休む日を申請する。 他の人は休暇が取り易くなるよう、お互いに協力する。
       各人の休みを調整したり、他人の行動予定を知って、全体として業務に支障が無いようにするため、
      全員の行動予定を黒板に記入することにしている。
       家族子ども参加の「バーベキュー大会」についても、企画は社員会に任せ、会社がこれを承認すれば
      経費等の面で、出来る限り協力している。
        地域社会との交流では、例えば地元中学生に現場作業体験をさせて、2日間でどういう事が出来る
      か、どのようなコミュニケーションが取れたか・・を学習させたりしているが、このような場合でも
      従業員が自発的に受入れ体制を考えてくれたり、世話役を買って出てくれる場合がほとんどである。
       以上のような活動を種々続けてきた結果、従業員としても働く意欲が湧き、定着率も非常に良くなっ
      たと考えている。


       ワーク・ライフ・バランスに関する当社の取組み実績は次のようなものが有る。
        @「こども110番のおうち」登録と、地元活動への協力        2006年6月〜
        A 家族子ども参加の「バーベキュー大会」 (会社構内など)    2006年7月〜
        B 夏季等一斉計画年休の取得                   2006年〜 2009年は3日
        C 家族子どものスポーツ活動への参加応援休暇配慮      スポーツ少年団・高校競技
        D 中学生の体験学習の受け入れマニュアルの作成          2006年7月〜
        E 女性従業員の業務負担軽減の為に親会社との業務委託契約    継続中
        F 子育て従業員のための育児休業規定類の見直し         2007年6月〜
        G 養護学校生・中学生の体験学習受入れ               2007年7月、10月
        H 地域・学校活動への貢献、プラスチック材料の供与など     2008年1月〜
        I 子ども家族手当、入学・慶弔金等の増額改定            2009年4月〜


3.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット   → 残業減、休暇取得促進による働く意欲向上に伴い、業務効率が上がったと考える。
                  地元に定着する企業として、日々の連絡、連携を深めるため、年1回、地元区
                  長様 に「定期経営環境報告会」を開催している。
        デメリット → 出産・育児や働き方の制度を見直しても対象者がいない場合もある。この場合は
                  会社が制度的な両立支援に取組んでも、従業員から評価されることがないので、
                  ワーク・ライフ・バランスを進める過程でジレンマに陥る。


4.これから行動計画を策定される企業へのアドバイス

        現在は世間一般に経営環境は厳しいが、従業員の働き易い環境と、意欲を昂揚したり、コミュニ
       ケーションを図るために、ある程度の福利厚生の原資は確保する必要が有る。
        当社の場合、親会社からのミッションとして企業PRをする必要はないが、環境に携わる事業として、
       コンプライアンスを維持しながら、従業員の思い(実態)を常に把握し、働き易い職場環境の維持と
       従業員のやる気を引出すために何がしてやれるかを考えていきたい。
        会社規模からもアットホーム的な会社にして、さらにワーク・ライフ・バランスを推進したいと考えて
       いる。


株式会社 菱栄 次世代育成支援行動計画
     社員が仕事と子育てを両立させることができ、社員全員が働きやすい環境をつくることによって、すべて
    の社員がその能力を十分に発揮できるようにするため、次のような行動計画を策定する。



 1.計画期間  2006年4月1日から2011年3月31日までの5年間
 2.内  容

    

 (1) 子育てを行なう労働者等の職業生活と家庭生活の両立を支援するための雇用環境の整備を行なう。

   ・実質的な女性対象者がいなく、今後必要となった時点で、その制度の周知や相談対応を更に検討する。
   ・男性の育児休業のほか、その他運用面での必要な環境改善は、今後の状況において、都度整備を図る。
   ・親会社(三菱樹脂株式会社)での、諸整備に準じ、継続的に検討を行なう。

 (2) 働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備を行う。
     ・2008年度を目標に、年次有給休暇2日間の年度計画取得制度を導入する。
     (当年度支給日数に対する取得率: 2005年の74%から80%以上を目指す)

 (3) 子ども・子育てに関する地域貢献活動を支援する
     ・2006年度以降、近隣中学校からの就業体験の希望があれば、その場の提供ができるよう準備する。
     ・2006年度以降、労働者が子どもとの交流の時間、また働く職場の人との交流の機会が持てるよう、
      会社福利行事への家族の参加を積極的に案内する。
     

  実績状況

        @「こども110番のおうち」登録と、地元活動への協力           山東西小学校 06年6月〜
        A 家族子ども参加の「バーベキュー大会」 大鹿工場内         福利厚生 06年7月〜
        B 夏季等一斉計画年休の取得 (稼働調整対応含む)          2日間 06年8月
                                                     3日間 09年
        C 家族子どものスポーツ活動への参加応援休暇配慮           スポーツ少年団・高校競技
        D 大東中学校体験学習の受け入れ準備対応標準作成          大東中学校 06年7月〜
        E 女性事務員の業務負荷を減少する為、親会社への部分業務委託の連携継続
        F 子育て労働者の雇用環境整備から、育児休業その他規定類の見直し      07年6月〜
        G 長浜養護学校生・長浜北中学校生の体験学習             07年7月、07年10月
        H 地域・学校活動への貢献、プラスチック材料の供与など        08年1月〜
        I 子ども家族手当、入学慶弔金等の大幅増額改定            賃金規則類 09年4月〜



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事例7 仕事の進め方、時間管理などに役立った・・・・S 社 

”多様な働き方に関する検討の推進”


  所在地   大津市
  従業員数  101人〜200人
  業 種    サービス業


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       当社のワーク・ライフ・バランスへの取組みは、平成17年に次世代育成法の施行に伴い、親会社
      がこれを推進する動きに、当社も将来の法制化を見据えて同調する格好で始まった。
        これまでから親会社からは、様々な法令改正の情報や事務処理全般に関する研修や伝達が頻繁に
      に行われている。  また、いろいろな労働条件は親会社、当社、および労働組合の三者協定で締結
      されるので、親会社で制定された就業規則はそのまま当社の労働条件にもなっている。
       当社の行動計画は、さしあたって親会社の行動計画と同じレベルのものを策定することとし、まず
      社内向けに、総務課より次世代法の主旨、ワーク・ライフ・バランスの意義などを記載した周知文書を
      発信した。 と同時に、@男性育児休業取得促進と女性の育児休業取得率90%、A産後や育児休業後
      の職場復帰に関する配慮、B育児支援のための家族手当の見直し、C現行制度の周知などを折り込ん
      だ第一次行動計画を策定した。 この第一次行動計画は、平成17年4月にスタートして2年間を計画
      期間としたが、「男性育児休業取得促進と女性の育児休業取得率90%」の目標は、対象年齢層が少な
      いということもあって、未達のまま平成19年4月から新たに3年間の計画期間で第二次行動計画に切
      り替えている。


2.行動計画の目標と特徴的なこと

        第二次行動計画には別紙の通り、目標を3つ策定しているが、その中に「多様な働き方に関する
      検討」を掲げて、試験的にテレワーク制度を検討中である。 現在はあくまでトライアルの段階である
      が、この検討は、ワーク・ライフ・バランスを意識した在宅勤務であり、例えば育児が必要な子どもを
      持つ社員が一定期間在宅勤務し、重要な打合せだけ出社するとか、午前中は会社に出勤し、午後は
      家庭で子どもと過ごすというような、多様な働き方を選択することができる。
       このような検討が、育児や看護が必要な子どもを持つ社員にとって、会社を退職せずに、会社と家庭
      の両立ができる手段となり、結果として雇用の安定に繋がればと思っている。


3.行動計画策定にあたっての準備事項

       行動計画を策定にあったって準備したことは、親会社からの情報に加えて、他社の事例や社外の講習
      会にも積極的に参加して勉強した。 当社の業種柄、どうしても納期厳守のため残業で対応せざるをえな
      いことが多く、過重労働になり勝ちであるので、「ノー残業デー」を決めたり、有給休暇の取得促進にも
      取組んでいる。
       仕事と納期をこなしながら残業が増えないようにするべく、仕事の進め方や人員体制の検討を進めてい
      る。

  

4.行動計画の推進にあたって苦労した点や問題点

       先ほども述べたように、経営としてはあくまで、お客様への納期が優先する。作業を進めていく中
      では、当初の計画通り進まないケースもあり、それにより要員個々人の負荷が高まっていくことになる。
      その中で、核となる要員が育児や看護によりプロジェクトの現場から一時的に離れることは、残った要員
      の負荷が更に高まることにもなる。 早めに応援体制を組む等の対応もとっているが、核となる要員の代
      わりがすんなりと務まらないケースもあり、このあたりの人員体制の考え方が、今後に向けての課題でも
      ある。


5.行動計画の推進にあたって工夫した点

        産前産後休暇あるいは、育児休業を取得した社員へのキャリア形成に関する支援として、例えば昇給
      や賞与の支給にはその期間の勤務に対する評価が基準となるが、休暇・休業を取得している社員は、そ
      の間は成績が無い状態になる。 このような状況に対応するために、休業前の成績を使うなどの配慮を
      して育児休業等が取得し易いようにした。
        また、社長が全社員と面談をする機会を用意し、この機会を活用してワーク・ライフ・バランスに関
      する社員の問題や、要望を吸い上げるようにしている。


6.行動計画を策定してのメリットあるいはデメリット

        メリット  → 在宅勤務をトライアル的に導入し、数名の社員が活用している。家庭と仕事のバラ
                 ンスが取れるようになり、概ね好評である。
        デメリット → 上記に関して、周囲のメンバーとのコミュニケーションをいかに円滑に行うか、継
                 続して考える必要があるように感じている。


7.今後、行動計画を策定される企業へのアドバイス

       @高い目標を掲げず、自社で出来る範囲の改善目標を探し出し、活動を定着させる。
       Aワーク・ライフ・バランスを進めるにあたって、やはりワーク・ライフ・バランスの推進には、「当社は
         こういう目標で、こう進める」 ということをトップダウンで明示してもらうことが必要。
       B子育て支援の恩恵を受ける社員だけでなく、他の社員とのバランスを考えないとうまく行かない。


S社の行動計画
    社員の仕事と子育ての両立を引き続き支援すると共に、社員全員が、自らの能力を十分に発揮しながら、
   心身共に健康に、かついきいきと働くことができるよう、次の通り行動計画を策定する。


 1.計画期間  2007年4月1日から2010年3月31日までの3年間
 2.内  容

     
  目 標 1   
  産前産後休暇/育児休職を取得した社員へのキャリア形成に関する支援

  対   策   
 ・2007年4月    育児事情により、休暇・休職した場合の昇給基準の見直し・
              明確化および社員への周知
 ・2007年4月〜  育児事情をもつ社員に対する評価のあり方の検討

  目 標 2   
  仕事と育児の両立支援に関する制度運用のさらなる充実/一層の利用促進
 
  対   策   
 ・2007年4月〜  休暇制度等の運用の充実に向けた検討
 ・2008年4月    社員への周知、制度実施
 ・2007年9月〜  より一層の各種制度の利用促進を目指した情報提供の検討
 ・2008年9月    環境整備の実施、社員への周知

  目 標 3   
   多様な働き方に関する検討

  対   策   
 ・2007年4月〜  労働時間の適正化を経済的に推進するための、年次休暇取得
              促進等メリハリのある働き方への対応検討、社員への周知
 ・2007年7月    社員への周知
 ・2008年4月    社員への周知、制度実施



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事例8 仕事の進め方、時間管理などに役立った・・・・株式会社 向茂組

”就学前の子どもを持つ従業員に対する短時間勤務制度や半日勤務制度の導入”


  所在地   東近江市
  従業員数  60人 ( 男性 50人・女性 10人 )
  業 種    建設業


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       行動計画策定に取り組んだきっかけは、建設工事入札参加資格の基準見直しが有ったためである。
      建設業という仕事は、進捗状況が絶えず雪や雨など天候に左右される。 かと言って工事の納期遅延
      は許されず、納期遅延は会社の評価となり、次回の入札にも影響する。 また仕事は平準化し難く、
      夏季は比較的仕事も安定しているが、年末から翌年の3月末にかけては、それこそ突貫工事で仕事を
      する状況になる。
       従って、このような時季は仕事が深夜になることも珍しくなく、残業は本人や会社側でコントロール
      できるものではないが、冠婚葬祭など、どうしても本人の都合で仕事を休まねばならないような状況に
      なった場合は、これまでから会社としては、できる限り本人の都合を優先して、休みや早退につい配慮
      してきた。
       そのような状況の中で、平成20年8月から行動計画策定に取り組んだ。 まず、会社に出入りして
      いる社会保険労務士さんの力を借りて、行動計画策定の事例、他社の様子、ワーク・ライフ・バランス
      を導入するメリットや問題点などを聞いたり、相談に乗ってもらい、取り組み易い目標を模索した。
       当社の場合は、事務部門は比較的フレキシブルな勤務体制が取り易いと考えられたので、目標のひと
      つに、「小学校就学前の子どもを持つ従業員が希望する場合に利用できる短時間勤務制度」を導入する
      こととした。
       これまでから事務部門の勤務時間は、採用の際、本人が自分の家庭事情を考慮して、8時〜17時、
      9時〜18時のどちらかを選択できる仕組みになってはいたが、これを小学校就学前の子どもを持つ従業
      員は申請により半日勤務ができるようにし、更に土曜日・祭日を完全休みとした。
       この制度は、育児をする人には一定の評価を得たが、やはり一部の人にしか利用できないという限界
      がある。
       計画期間内に年次有給休暇の取得日数を増加させることも目標とした。当社の従業員の給与体系は
      年棒制を取っており、事務・営業・工事の3つの担当に分けて、各人の勤務態度や会社への貢献度が評
      価され、翌年度の年俸に反映される。 例えば工事部門の従業員は、自分が担当する工事の工期は自
      分で管理しているので、工期厳守のため、雨であろうが、休日であろうが、どうしても現場に居て、遅く
      まで頑張るようなことがあり、なかなか残業縮減や有給休暇の取得を目標に掲げても達成できにくいこ
      とがワーク・ライフ・バランス推進者としての悩みである。


2.ワーク・ライフ・バランスの推進にあたって努力したこと

       ワーク・ライフ・バランスの推進については、今はまだ事務部門に限られるが、人事担当者が普段の
     会話の中で、いろいろな家庭環境を聞いたり、話し合ったりする中で従業員の希望を吸い上げて、会社
     として臨機応変に対応するよう心がけている。例えば保育児を持つ従業員には、どれだけ働けるか、どの
     時間帯が働くのに都合よいかを聞き出して、「それならこういう勤務体制で働いたらどうですか」と勧め
     ることにしているが、現実の問題として短時間勤務や育児休暇は、給与が減るので取りにくいという声も
     ある。


3.行動計画策定の推進にあたって、苦労した点や問題点

       育児休業や短時間勤務制度を利用することは、本人は働き易くなるが、これまで会社の重要な仕事を
     担当していた従業員でも、職場復帰した場合には、これまでの仕事と職種が変わることになる。 そのこ
     とから、自分の持っている資格が活かせなくなり、本人の仕事に関する意欲や満足度がそこなわれると
     いうことが発生する。 当社の場合も、休んでいる人をいつまでも待っていることは、会社全体として
     支障となるので、やむをえず、「今までの仕事は他の人にやってもらうので、復帰後は違う仕事になりま
     すよ」ということを言わざるをえない。
       また、育児休暇や短時間勤務制度を利用している人に比べて、その他の人が不公平感を持たないよう
     に、会社としては気を使っている。 仕事が片寄ったり、忙し過ぎて心に余裕が無い場合は、従業員同士
     の連帯感は生まれないような気がする。

  

4.ワーク・ライフ・バランスを推進するにあたっての現実の問題

       国や県などでもいろいろと、企業の両立支援のバックアップをしようと考えてくれていると思うが、現実
     問題として、託児施設の充実を切に希望する。 例えば育児休業をとりたい人が保育所が充実していない
     ので、やむなく会社を退職する。 そうして保育所の空きを待っていても、保育所に預けるには勤務先を書
     かないと預けられないという矛盾が発生している。
      保育所の”ならし保育期間”という制度がある。 これは保育所に入所しても保育所に慣れるため、短時
     間保育となり、フルタイムで働くには1ヶ月以上かかるので、すぐに復職できるわけではない。 仕事を持っ
     た状態ではこれに対応するのは困難である。 結局この”ならし保育”のために退職せざるをえないという
     ことが起こっている。 これを例えば育児休業中に”ならし保育”に参加できるよう、制度を前倒しにする
     など工夫して欲しい。


5.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット  → 働ける時間だけ、出勤できる環境つくりができた。
        デメリット → @短時間勤務制度を導入すると、やはり会社内の戦力は落ちる。
                 A子どもを預け易い環境が無いと難しい面も多いようで、行政サイドの支援が必要だ
                  と感じている。



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事例9 仕事の進め方、時間管理などに役立った・・・・株式会社 橋本建設

”「ノー残業デー」の設定や、「有給休暇年間取得予定表」の導入による時間管理”


  所在地   彦根市
  従業員数  23人 ( 男性 20人・女性 3人 )
  業 種    建設業

1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       ワーク・ライフ・バランスに取組んだ直接のきっかけは、建設工事入札参加資格の基準見直しが
      有ったことである。 当社のような建設業は、工事が天候に左右されるにも係わらず、”納期厳守”が発注
      先から当社への業績評価に大きなウエイトを占めている。 従って一旦工事の日程が決まってしまうと、
      工事部門の担当者は下請先の進捗状況を管理しながら納期厳守に最大限注力をする。場合によって
      は、休日返上の業務も当り前の状況となり、さらに工事のあとの書類作りに残業を重ねるという状況
      がこれまであった。
       そこで、当社では別紙の行動計画の通り五つの目標を掲げ、中でも年次有給休暇の取得促進と、残業
      の縮減に注力することとした。


2.行動計画策定の進め方・工夫した点

     @行動計画策定の事前準備事項として、まず社内に10人の委員からなる「社内検討委員会」を設置
       し、社長に委員長、専務・常務に副委員長をお願いした。 これは委員会の決定事項に社内での推進力
       を付けるためである。 事務局として、総務・労務担当の係長と女性、それ以外の5人の委員は、それ
       ぞれが五つの目標の一つを分担し、進捗管理を含めて推進担当とした。
       委員会は導入時には毎月開催したが、今は少し落着いたので3ヶ月に1度開催している。
     A残業縮減や有給休暇の取得促進については、毎月1回、朝礼で繰り返しPRし、「残業しないようにしま
       しょう・・」と呼びかける他、有給休暇の取得状況を報告し、社員全員の意識を高めるように努力してい
       る。
     B残業の縮減については、月1回、第3土曜日を「ノー残業デー」に取決め、この日は幹部社員が率先して
       退社し、一般社員が帰り易いようにした。 「ノー残業デー」を第3土曜日と決めたのは毎月この日が
       役員会開催日と決まっていたので、全員が仕事に区切りをつけて早く退社する日に適当だったからであ
       る。
     C有給休暇の取得促進に関しては、営業総務部で有給休暇の「年間取得予定表」の様式を定めこれに各
       社員が自分の予定を考慮して記入してもらうようにした。 「年間取得予定表」は10月から向こう1年間
       の予定を記入する。取得目標を当面、1年間で10日間としたが、社員同士の都合がかちあうことも有
       り、1ヶ月前に調整をしている。 有給休暇の取得の予定を社員から申請させ、「予定表」として様式
       化したことは、事務の簡素化・合理化につながる一方、社員が有給休暇の申請がし易くなったし、上司
       からも予定表を見て、部下に休暇の取得を促すなどの成果が出た。


3.行動計画策定の成果や、うまくいかなかった点

     @上記の活動で、残業に関しては飛躍的に減少した。 半減以上の効果が有ったといっても過言ではない
      が、問題は有給休暇の取得であった。 事務部門ではこの問題は発生しないが、工事担当部門では前
      述のように、納期の関係から、どうしても月2回の土曜日(休日)に出勤せざるをえないことが多く、
      特に工事が集中する時期は連続出勤となる。 いくら営業総務部で「次の工事が集中するまでに有給休
      暇を取ってください・・」と言っても、この休日出勤した分を代休(振替休日)として休むのがせいい
      っぱいである。 その為、折角工夫した「年間取得予定表」も、予定表に記載した休暇予定を、有給休
      暇でなく、休日出勤の代休(振替休日)として消化しているのが現状である。
      代休(振替休日)の取得は発生してから3ヶ月以内の決まりとなっているが、有給休暇の繰り越しは翌
      年まで有効であるため、どうしても代休(振替休日)の取得が優先されるが、これは社員の気持ちとし
      ては当然で、仕方ないことと思っている。
     A以前は、休日出勤した時間分を時間外勤務として給与で精算していた時期もあったが、こうしても休日出
      勤や残業に歯止めがかからないので、経費の節減ということもあり、現在では残業は基本的には一切認
      めないルールとし、「残業する必要がある場合は、事前申請で上司の承認が必要」というトップダウン
      方針を打ち出した。
      このような努力で残業は大幅に縮減できたが、有給休暇の取得促進が目標の中で一番未達成になって
      おり、当面本人の仕事の工夫による取得努力しかないことが推進担当者の悩みである。
     Bそれ以外の目標では、男性の育児休暇については、奥さんの出産に立ち合いたいという気風が若い男
      性層に増えたのことを考慮して、1日の特別休暇を付与する取り決めをした。 実際に奥さんの出産に際
      して、前後にこの特別休暇1日と有給休暇を1日取得した男性社員が出たので喜ばしいと思っている。
      男性の育児休業についてはまだ発生していない。
     C目標の1つに定めている、ボランティア休暇の導入については、制度内容の検討とともに社員への周知
      も進めているが、正直言って、「ボランティア」の範囲が決めにくく、例えば先日も地元の消防団へ参
      加し、火事で2日間休んだ社員がいたが、これをボランティア休暇として扱うか、まだ決めかねている。
      この場合はまだ、市役所がボランティアとして協力した旨を証明してくれることも可能だが、個人で一
      般的なボランティア活動をしても、実際に従事したかを証明しにくいなど、検討課題も残っているので、
      これからいろいろ事例が出てから決めたいと思いながら思案している。
      また、先ほども述べた有給休暇の取得が進まないという問題もあり、この上、ボランティア休暇の取得を
      推進するにはもうひと工夫が必要で、むしろボランティア活動は社会貢献として推奨するが、休暇として
      は有給休暇を取得してもらうことを優先させた方が良いかも分からない。
     D社員向けに行ったアンケートの結果で分かったことだが、有給休暇の取得が進まない理由として、当社
      のような事業では、仕事には絶えず怪我がつきまとっている。 その為に怪我で休まなけれなければな
      らないような事態を想定して、有給休暇を残しているようである。 怪我による休業をした場合は社会
      保険で補填しても満額ではないので、収入減を心配していることも一因になっていることが分かった。


       以上のように、当社はワーク・ライフ・バランスの推進に関してかなり注力しており、社長が若いこともあ
     って、両立支援に関しても非常によく理解もらえ、社長自身が推進に対して意欲的である。 社員全体
     の平均年齢も30台半ばと、非常に若い活力のある会社なので、ワーク・ライフ・バランスを推進する社
     内風土は整っており、就業規則の整備等も出来上がっているのだが、結果がついて来ないのは担当者と
     して頭を抱えるところである。


4.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット  → @ノー残業デーの取組みにより、残業時間が減った。
                 A有給休暇の年間取得予定表の導入により、有給休暇が取り易くなった。


5.今後、行動計画を策定される企業へのアドバイス

       建設業のような仕事は、徹底的に法制化により完全週休二日制を導入しないかぎり、男性の育児休業
     休業は発生しにくい環境である。
       会社の制度としていくら規定を作っても、やはり個々人が”有給休暇を取得する”という気持ちになって
     くれないと成果に繋がらない。
       トップダウン方式でむりやり有給休暇を取得させる方法は、事業が立ち行かなくなり適当でない。
       そうは言っても諦めず、会社やワーク・ライフ・バランスの推進者が繰り返し声を掛けることは必要で、
     休み易い環境を作るというトップの理解と努力は必要である。
       建設業の場合、工事のあとの書類作りに時間がかかり残業が発生する一因となっている。作業の平準
     化を図り、残業の常態化を避ける工夫が必要だ。


株式会社 橋本建設 一般事業主行動計画(第1回)
     社員の仕事と子育ての両立をさせることができ、社員全員が働きやすい環境を作ることによって全ての
   社員がその能力を十分に発揮できるような雇用の整備を行なうとともに地域の次世代育成支援対策に貢献
   するため次のような行動計画を策定する。


 1.計画期間  平成20年10月1日から平成23年9月30日までの3年間
 2.内  容

   

  目標1  安定して育児休業を取得できる環境をつくるため、育児休業制度の周知を図り、休業中及び復職後
        の処遇に関する情報を提供し、育児休業期間中であっても定期的に会社に関する情報を提供する。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年10月〜    情報提供内容の検討開始
      ・平成20年11月     育児休業制度の周知と相談窓口担当者の選定
      ・平成20年12月     対象者へ情報提供の実施
      ・平成20年12月     社内報作成の取組みと実施
      ・平成21年度〜      社内報の定着とこれを活用した周知、啓発の実施


  目標2  働き方の見直しを行ない、社員が子育てに積極的にかかわることができるよう、年次有給休暇の取
        得促進と有給休暇取得率を高める。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年10月〜    取得促進のための制度内容の検討開始
      ・平成20年11月     取得率向上のための社員への周知
      ・平成20年12月     家族の誕生日や記念日に有給休暇を取得するアニバーサリー制度の導入
      ・平成21年1月      有給休暇年間取得予定表作成による取得促進の取組みを開始
      ・平成21年度〜      制度の定着と社員への周知、啓発の実施


  目標3  所定外労働を削減するため、毎月第3土曜日を「ノー残業デー」として実施する。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年10月〜    制度内容の検討開始
      ・平成20年11月     毎月1回の朝礼による社員への周知
                      全社員による「ノー残業デー」の実施
      ・平成21年度〜      「ノー残業デー」制度の定着


  目標4  男性の育児参加を促進するため配偶者出産休暇を設ける。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年10月〜    休暇制度内容の検討開始
      ・平成21年1月      就業規則の改定、届出及び制度の運用を開始し、全社員に対して周知、
                      啓発を行なう
      ・平成21年度〜      制度の定着と社員への周知、啓発の実施


  目標5  社員が積極的に地域活動に参加するためのボランティア休暇を導入する。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年10月〜    制度内容の検討開始
      ・平成21年1月      就業規則の改定、届出及び制度の運用を開始し、全社員に対して周知、
                      啓発を行なう
      ・平成21年度〜      制度の定着と社員への周知、啓発の実施



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事例10 人材の定着・・・・社会福祉法人 近江ふるさと会

”施設内託児所の設置で、安心して出産・育児ができる環境を創出”


  所在地   彦根市
  従業員数  230人 ( 男性 70人・女性 160人 )
  業 種    社会福祉事業


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       当法人は特別養護老人ホーム2カ所と身体障害者療護施設1カ所を運営している。 施設で働く職員
      員は若者が多く、結婚して出産・育児のため退職する者が多く、また介護という仕事から近年、新規採用
      が難しい状況にあった。
       こうしたことから職員の離職防止と家庭等に潜在している経験者の確保等を目的に施設内託児所の設
      置を計画した。 職員へのアンケート等を参考に平成20年4月から既存の空部屋を利用して試行的
      に小規模で実施したが予想外の希望者のため、(財)21世紀職業財団滋賀事務所のご指導を得て、
      平成21年4月の開設に向け、近江第二ふるさと園の敷地内に20人規模の託児所を新築し、設置・
      運営助成をお願いすることとなった。
       一方、最近の就職動向は、給与等の待遇面だけでなく、企業内において家庭と仕事の両立が図られ
      働きやすい職場環境が重視されてきていることから、職場内の両立支援を推進し、職員が安心して働
      けるよう行動計画を策定することとした。


2.行動計画策定の進め方

       託児所の建設を進める一方、職員がワーク・ライフ・バランスを図り易い職場環境をつくるための目
      標を折り込んだ行動計画を策定し、平成20年8月からスタートさせた。 これが次の3つである。
       @ ワーク・ライフ・バランスを推進する為のパンフレット作成、管理職への研修、職員への周知
       A ノー残業デーの設定、啓発とポスターによる周知
       B 年次有給休暇取得の促進
      目標の@、Aについては予定通り進捗したが、年次有給休暇の取得促進については、職員にアンケー
      ト調査を行い、取得しやすい環境づくりを行う。


3.平常時における施設内のワーク・ライフ・バランスの進め方

       組織的には、理事長・園長2名・事務局長・総務部長からなる経営会議でトップダウンの方針を決
      定し、周知する一方、各園(老人ホーム)の職員の声は職制を通じて絶えず園長が把握し、総務部に届
      く仕組みとなっている。
       また、就業規則などはいつでも職員が閲覧できるよう、各園に置いてある。


4.苦労した点やうまくいかなかった点

       助成金に関して言えば、例えば病院の院内保育所は補助制度が確立し、入園児の保険制度が完備さ
      れているが、高齢者福祉施設では取扱いが異なり、対応に苦労した。

5.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット  → @育児休業等を取得し易い職場環境の整備等により、離職防止となった。
                 A施設内託児所の設置により安心して出産・育児ができる環境を創出することと
                   なった。


6.今後、行動計画を策定される企業へのアドバイス

       若い人は、給与より福利厚生面や職場環境を重視していると思う。 休暇制度や託児施設の充実
      は大事だが、就業規則に規定されていても実際に取れないような環境ではダメであって、そこを事業
      所側がいかに工夫し、ワーク・ライフ・バランスの支援をしていくかであると思う。


社会福祉法人 近江ふるさと会 一般事業主行動計画(第1回)
    職員が仕事と子育てを両立しながら、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するとともに、
   育児休業制度等を取得しやすい職場風土を醸成し、職員全員が働きやすい環境を作ることができるよう
   次のように行動計画を策定する。


 1.計画期間  平成20年8月1日から平成22年7月31日までの2年間
 2.内  容

     
目 標 1
  育児休業等、取得しやすい職場環境を整備するため、パンフレットの作成と管理職層
  への研修を行ない、制度の周知を図る。

対   策
 ・平成20年12月    職場への周知のため、パンフレットの作成・配布
 ・平成20年8月〜   育児休業制度や運用について管理職層への研修の実施と
                周知

目 標 2
  小学校就学前の子を持つ職員が安心して利用できる施設内託児所の新築を行ない、
  託児施設の充実を図る
 
対   策
 ・平成20年11月〜  施設内託児所の新築整備(平成21年3月竣工予定)
 ・平成21年4月     施設内託児所の円滑な運営

目 標 3
  所定外労働を削減するため、ノー残業ディを設定し、実施する。

対   策
 ・平成21年2月〜  ノー残業ディの開始
              管理職への啓発とポスターの啓示による周知

目 標 4
   年次有給休暇の取得の促進のための措置

対   策
 ・平成21年4月〜  年次有給休暇の取得を促進するため、キャンペーンの実施



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事例11 人材の定着・・・・原馬化成株式会社

”子育て年齢のパート社員向け「短時間勤務制度」導入による人材の定着”


  所在地   長浜市
  従業員数  36人 ( 男性 25人・女性 11人 )
  業 種    プラスチック成型・塗装・加工


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       会社方針のキーワードは、「誠実」という文字に集約される。 @顧客の利益につながる誠実な仕事
     をする。A社員の生活の向上と安定に努力する。 B会社の持続的発展に全力を尽くし、社会に貢献
     することである。
      「会社は個の集団である。上司と部下、お客様と会社、それぞれが関係しあって成り立っていると思
     思うので、人間と人間の誠実な関係を保ちながら企業としての”誠実な夢”を追求しています」・・・と
     話される同社は、もともと社員に配慮した優しい会社であり、ワーク・ライフ・バランスも社長自らが
     トップダウン方針で推進されたようである。
       従来から、会社の規模から言っても、小回りが効くのがメリットであり、就業規則を大上段に構えな
     くても、例えば、社員が子どものために、やむをえない急な用事ができて申し出た場合は早退を認めて
     あげて、残った仕事は全員でカバーするような柔軟な配慮と社員同士の連帯感が以前から有った。
       そのような社風ではあったが、平成20年6月頃、産休を取る社員が出た際、その後も継続して働き
     たいという意向であったので、社労士さんの指導のもとで「育児・介護雇用安定等助成金」を申請する
     こととし、従来の就業規則等ももう一度見直すと同時に、一般事業主行動計画を策定した。
      「会社によっては、結婚したらやめねばならないという雰囲気の会社や、長期間働いて給料が高くな
     った社員は結婚・出産を機会にやめてもらって、新しい人を採用し労務費を節減するという会社も有る
     と聞くが、当社の場合はワーク・ライフ・バランスの推進のおかげで、続けて働きたいという社員が多
     い、いい雰囲気の会社です・・」と同社の総務課長さんは胸を張る。


2.行動計画策定のために、事前に準備した事項

       行動計画策定のための準備としては、残業や早退、有給休暇に関する実績について改めて現状を
      把握したことと、他社の事例を集めたことである。 こうして策定した一般事業主行動計画は別紙の通
      りであるが、目標のひとつに「小学校就学の始期に達するまでの子を持つ社員を対象とする短時間勤務
      制度」を掲げ、既に導入した。同社の従業員構成は正社員・パート・派遣社員からなっている。 また
      正規の勤務時間は通常8時から17時までとなっているが、この短時間勤務制度は、3歳未満の子ども
      を持つパート社員が保育園の園児の送り迎え等を必要とした場合、9時から16時までの短時間勤務を
      選択できることになっている。
       また会社の生産体制を考慮しながら、パート社員が短時間勤務を選択し易いように、申請のあったパ
      ート社員の配属を、比較的他の人と連携作業ではない検査担当にシフト変えするようにしている。


3.行動計画の目標と推進に関する悩み

       行動計画の目標には別紙の2点を掲げた。これ以外に残業縮減や有給休暇取得促進を推進する
     よう注力したが、現実には昨今の不況の影響もあり、受注先の会社が次第に海外に生産拠点を移そうとし
     ている。 また受注には波が有って、受注から納品まで緊急を要請される場合が多い。
       このような状況を乗り切るために、本業が優先されるので、正直言ってワーク・ライフ・バランスは推進
      しにくい。
       総務部門としては、社員に有給休暇を取得してもらいたいが、1個の製品を加工するまでに何分何秒か
     かるか、加工コストが何円何銭かかるかが、企業が生き残るために大事な今、社員の方でもそれを分か
     っていて休みが取れないのが現状である。
       景気はまだまだ先が見えない状況で、受注が安定していない。
       何事も会社有っての福利厚生であり、本来の事業経営と両立支援とのバランスが本当に難しい。
       国や県などでもいろいろと、企業の両立支援のバックアップをしようと考えてくれていると思うが、助成
     金の申請や、行動計画の認定手続きが複雑で面倒である。

4.行動計画を策定してのメリットもしくはデメリット

        メリット  → @職場生活と家庭生活との両立を目指すことにより、雇用の安定が図れた。
                 A短時間勤務制度の導入により、子育て年齢の社員の採用が容易になった。
                 B現在は育児休業取得者は1名であり、事務負担の増加を感じたことは無い。




原馬化成株式会社 一般事業主行動計画
    社員が仕事と子育てを両立させることができ、社員全員がその能力を十分に発揮できるよう職場環境を
   整える。


 1.計画期間  平成20年6月1日から平成22年5月31日までの2年間
 2.内  容  

 

  目標1  小学校就学の始期に達するまでの子を持つ社員を対象とする短時間勤務制度を導入する。
        (現在のところ3歳未満の子が対象)

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年6月〜     制度内容の検討
      ・平成20年7月      就業規則の改定、届出及び周知


  目標2  妊娠中、休業中及び復職後の女性従業員のための相談窓口を設置する。

  【目標を達成するための方策と実施時期】

      ・平成20年6月〜     相談窓口担当者の選定
      ・平成20年7月      相談窓口担当者の研修、窓口の設置



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事例12 社会貢献による企業イメージの向上・・・・高島鉱建株式会社

”小学生を対象とした環境教育プログラムを作業現場で実施することによる、体験型学習と
 建設業に対するイメージアップ”


  所在地   高島市
  従業員数  51人 ( 男性 45人・女性 6人 )
  業 種    建設業


1.行動計画策定までの背景・きっかけ

       当社は平成18年頃から6S運動(整理・整頓・清掃・清潔・躾・スピード)を推進している。また社内
      には教育の四原則が定められており、管理職社員は@部下の悩みや思いをじっくり聞く、A部下のや
      る気を引き出す、B部下を成長させる、C部下の成果を引き出すことに絶えず努力するよう留意して
      いる。
       そのような社風の会社であったので、ワーク・ライフ・バランスに取り組む際も、どれだけ難しいこと
      かと思ったが、いざ取組んでみると、”これまでやっていることの延長だ”という印象が強い。
       教育の四原則は、部下に対する仕事や情操教育だけではなく、トップの方針を社員に徹底すると同
      時に、下からも意見が言える風通しの良い職場にすることと、オーナー会社に有り勝ちな、各部門の幹
      部社員が横一線の組織になっていて、直接社長から個別に指示を受け行動するという縦線形の組織から
      、横同士の部門が互いに連帯感を持って仕事を進めるという組織体系にするために効果を上げている。
       このような環境のもとで、平成20年夏ごろ、建設工事入札参加資格の基準見直しに関する説明会が
      有り、これを機会に当社も行動計画を策定し、平成20年10月から2年間の計画期間で取り組むことと
      した。
       行動計画の策定に際しては、社員に対してアンケート調査を行い、ワーク・ライフ・バランスに関する
      周知を図るとともに、社員の要望を引き出した。これまでから育児をしている社員には緊急の用事が発生
      した場合には、仕事の遣り繰りをつけて早く帰宅させるなどの配慮はしていたが、社員の要望を聞き出し
      て就業規則を改定し、子育てをする社員が誰でも利用できるよう、標準的なものにした。


2.ワーク・ライフ・バランスの推進と特徴

       当社の仕事は、工期厳守が使命であることと、作業の進み具合が天候に左右されることから、従来
     休日は日曜・祭日を除き、会社からの指定休日の形をとっていたが、申請すれば任意の日を休日とするこ
     とができるよう改定した。
       また、ノー残業デーを設定し、毎週水曜日は上の人が率先して帰る、あるいは場合によっては強制的に
     消灯するなどの手段をとることもある。 管理職の人には研修を行い、ノー残業デーの主旨を初め、ワー
     ク・ライフ・バランスの意識高揚を図っている。
       しかしながら、一方で、従来この近辺の地区だけだった建設業の事業地域が県下どこででも業務をして
     も良いことになったことと、このような経済環境のもとでは、少々遠方でも受注できれば上等で、遠くまで
     出掛ける業務も増えたので、交通事情や、工期厳守のために残業が増加した。
       当社は国土交通省近畿地方整備局、滋賀県、高島市などの発注機関と、NPO法人などが協賛する
     CESA(略称セサ)に参加している。
       これは行動計画の目標にも掲げている「子ども・子育てに関する地域貢献活動の実施」として行ってい
     るもので、例えばなぜ防砂ダム工事は必要か、工事にはこんな人が、あるいは機械が携わってできる・・と
     か、防砂工事によって自然環境や人々の財産がこんなふうに守られる、あるいは自然の草木・地層などに
     ついても勉強する機会を子ども達に与えている。 子ども達は学校の課外授業として参加し、NPO法人
     の環境マスターの今村先生から地域の歴史や地層なども教わって、建設業に関する理解が進めば、それ
     が建設業に対するイメージ改善にも繋がるのではないかと期待している。
       今までの活動では、当社が工事施工した近くの「安曇川道の駅」に子ども達と一緒に植樹をすると同
     時に植樹した木の名前や地名の由来、あるいは安曇川の歴史を勉強した。 また大戸川ダム工事の現場
     に行って「信楽大戸川の森と水源」を勉強して水の透明度調査をしたり、子ども達に工事現場で実際に
     静止した10トントラックや重機に乗ってもらって、子ども達が、高い位置から運転している工事機械の
     目線を実際に体験し、交通安全の必要性を認識してもらうよう工夫している。


3.行動計画の推進にあたって力を入れたり、工夫した点

       目標1の「妊娠中および出産後の社員の健康管理や相談窓口の設置」に関しては、総務課長が担当
     したが、男性であり女性社員が話しにくいことを配慮して、建設業の国民健康組合に依頼して保健師さん
     を派遣してもらい、女性社員の相談にのってもらう一方、健康診断の結果をもとに、健康面・食事指導・
     あるいは、メタボに関する指導などもしてもらっている。
       前述した社員向けアンケートの結果、この地域はまだ”男性は働き、女性が育児を担当する”という考え
     方が強いにも拘わらず、共働きが多い。 それだけ女性が育児に対して負荷がかかっているという現状
     と、育児休業を取ると収入が少なくなるという悩みとを持っていることが分かったので、育児休業をした
     場合の法の助成制度等について説明をすることにしたが、いざ利用するとなると、制度や手続きが複雑で
     もう少し簡単にならないかと思う。


4.今後、力を入れて取組んでいきたい点

       今後とも地域の子どもたちとの交流は深めていきたい。 これまで建設業という仕事は例えば自然破
      壊に繋がったり、無駄な箱物工事が多いという世間一般の悪い評価を持たれがちであったが、このよう
      な活動を地道に重ねていくことによって、子ども達や世間の認識も変わり、建設業の見直しに繋がる。
       また求職離れしている建設業にも応募者が増え、後継者の育成に繋がる。 さらには、昨今のような
      豪雨による災害は、結局は人災なんだという警鐘を鳴らすことにもなる。 子ども達と一緒にさまざま
      なことに携わっているうちに、こちらも”ひらめき”が有ったり、勉強になることもある。


5.こらから行動計画を策定される企業へのアドバイス

      @行動計画を策定する手順として、まず社員向けのアンケート調査を行い、社員の意識調査やいろいろ
       な意見を聞き、そこから方向性を見出して目標を決め、取組むことが大切。
      Aできない目標を掲げても仕方ないので、少し努力すれば手が届く目標にする。
      Bトップが聞く耳を持ってもらわなければワーク・ライフ・バランスは推進しないので、まずトッブが
       進めるという意識を持ってくれることが重要である。


6.今後、認定を意識しているか

       認定に至るまでにはまだまだだと思う。 無理をせず、着実にこのような取組みをした結果、認定を
      受けられるレベルになったら挑戦しようと思っている。


高島鉱建株式会社 一般事業主行動計画
   高島鉱建株式会社のすべての従業員がその能力を発揮できるような雇用環境の整備を行なうと共
  に、地域の次世代育成支援対策に貢献するため、次のように行動計画を策定する。


 1.計画期間  平成20年10月1日から平成22年9月30日までの2年間
 2.内  容

     
目 標 1
  妊娠中及び出産後の社員の健康管理や相談窓口の設置を行なう

対   策
 ・平成20年10月〜  社員へのアンケート調査、検討開始、情報収集
 ・平成21年4月〜   制度の周知、導入の実施

目 標 2
  子どもが生まれる際の父親の休暇の取得の促進
 
対   策
 ・平成20年10月〜  社員へのアンケート調査、検討開始
 ・平成21年4月〜    制度の周知、導入の実施

目 標 3
  ノー残業デーの導入、拡充

対   策
 ・平成20年10月〜  社員へのアンケート調査、検討開始
 ・平成21年4月〜   ノー残業デーの実施
               管理職への研修(年2回)及び会議体時の周知(毎月)

目 標 4
  子ども・子育てに関する地域貢献活動の実施

対   策
 ・平成20年10月〜  検討会の設置、受入れ体制についての検討
 ・平成21年2月〜   受入れる組織への教育の実施
 ・平成21年4月〜   受入れ開始



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